7月11日の北海道新聞夕刊13面「科学」のページでは、「骨格標本は語る」で北大総合博物館・小林快次准教授によるティラノサウルスなどの肉食恐竜の歯についてのコラムがあり、その下にサイエンスライターの土屋健さんが執筆した「ザ・パーフェクト 日本初の恐竜全身骨格発掘記」の紹介記事が載っていました。
私と小林さん、土屋さんとの付き合いは20年ほど前にさかのぼります。
当時、金沢大学理学部で地球科学を学んでいた私は、夏休みのアルバイトとして同級生の土屋さんと隣の福井県で恐竜化石の発掘に参加。その発掘に地元福井出身で、アメリカの大学で恐竜を研究していた小林さんも参加していたのが縁です。
昼間は炎天下の中、ハンマー片手に化石探し、夜はグラスに持ち替えて連日飲み会と夢のような時間を過ごしたのも今では良い思い出です。
それから月日は流れ、小林さんは北大総合博物館の准教授となり、日本で唯一の恐竜の研究者となりました。また、土屋さんはサイエンスライターとして恐竜や古生物に関する著作を世に出しています。
2013年7月17日日本の古生物学史に残る発表がむかわ町穂別博物館で行われました。
この衝撃的な会見について、本書では『むかわ町の恐竜化石は、これまでの日本産の化石とは大きく異なったものでした。恐竜の尾の骨が13個。すばらしい保存状態で、個々の骨がつながっていたのです。多くの日本産恐竜化石は部分化石で、しかもバラバラの状態で見つかります。しかしむかわ町の化石はつながって発見され、さらにその先が地層の中に埋もれているというのです。』とその学問的意義の大きさを強調し、日本古生物学史上最大の発見であるとしています。
また本書は学問的な話だけでなく発掘に関連した人々の知恵や工夫、思いをつづることで、恐竜に詳しくない人でも楽しめる内容となっています。
恐竜の化石がどういう経緯で発見され、正体が解明され、大規模な発掘につながっていったのか。大発見の裏には、研究者だけでなく、一般人や学生など様々な人間ドラマが繰り広げられていました。学問的な知識も分かりやすく説明され、克明な記録写真や、3DCGで描かれた恐竜のイラストも迫力満点です。
残念なことに、この発見の意義は地元道民にとって必ずしも理解されているとは言いがたい状況です。個人的には、後年学校の教科書に載り、日本人なら誰でも知っているぐらいのエポックメイキングな出来事になると確信しています。
地元北海道民にこそ読んで欲しい本です。Amazonのページはこちらから