社長就任ごあいさつ

平素は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。このたび2019年7月1日より、北海道新聞永田販売所の新社長に就任いたしました。

 

会社などの組織のことを「法人」と言います。 “人”という名前がつけられている通り会社にも人格があります。お堅い会社、賑やかな会社、オシャレな会社…世間には様々な会社があります。ですから、「道新永田」がどういう“人”でありたいのかが大事になります。

 

昨年9月に北海道全域が停電した胆振東部地震がありました。その日私は、地域新聞(道新りんご新聞)の号外を発行するために、自転車で平岸を駆け回り、情報収集にあたっていました。そこで目にしたのが地域を支えていた人々です。子供をおんぶしながら接客する店員さん、避難所の開設やサポートにあたった町内会や学校の先生方、炊き出しを行った商店街の店主さん…多かれ少なかれ被害を受けながらも、皆が使命感を胸に活動している光景を目の当たりにしました。

 

何かあった時、地域を支えることができるのはそこに暮らしている人々です。私どもはそうした人々に寄り添い、人と人をつなぐ地域密着型の新聞販売店を目指したいと考えております。

 

私が新聞販売業界に入ったのが2010年。以来9年間は、世間の「新聞屋」に対する偏見との戦いでした。忘れられない事件があります。結婚を機に、六花亭を辞め新聞販売所に入ることを決め、電話で親に報告したとき、登別から帯広まで車で駆けつけ、「頼むからそんな所に行かないでくれ」と懇願されました。私は実の親を通して、世間の新聞屋に対する見方を思い知らされました。

 

「偏見」といってしまうのは簡単ですが、それなりに根拠があったと思います。強引な営業、洗剤や景品などで契約をとろうとするモノ優先のセールス…確かに、そういう側面はあります。

 

そのイメージを少しでも変えられないか?どうやったら地域に受け入れられ、偏見をなくすことができるのか?そのことばかり考えてきました。

 

地域新聞(道新りんご新聞)の発行や、学校・町内会での出前授業、防災・歴史に関する啓発活動、商店街・町内会・行政との顔の見える関係づくり。これらの活動によって、世間の見方は少しづつ変わってきたように思います。

 

今後新聞販売業界はますます厳しくなっていくのは間違いありません。ただ私は自分たちの仕事を「新聞を売る」商売だとは思っていません。「地域に寄り添い、地域を豊かにする」…そのお手伝いをすることが本質であり、理念だと思っています。その理念を実現する手段の一つが新聞をお届けすることですし、それ以外にも「地域と繋がり、伝え、届ける」という新聞販売所の強みを活かす方法はまだまだあります。任天堂が本業を「花札とトランプを作ること」だとは定義せず、「娯楽を通して人々の生活を豊かにする」ことだと定義した結果、世界的な大企業に成長することができました。

 

大事なのは「誰のために、何をするか?」という強い想いであって、手段ではないと信じています。私達はインターネットという仮想的なつながりばかりが広がっている社会の中で、地域に根を張り、顔の見える関係を通して、よりよい社会を作るお手伝いをしたいと思います。志ばかりが高く、中身が追いついていない面があることは重々承知していますが、望まなければ叶わないことも事実です。どうか、私の想いをご理解いただき、応援していただければありがたく思います。誠に微力の身ではありますが、今後ともご支援ご厚情を賜りますようお願い申し上げます。

 

北海道新聞永田販売所 代表取締役 伴野卓磨


ごあいさつ

2011年に発生した東日本大震災は多数の犠牲者を出しただけではなく、あまりにも被災範囲が広かったため地域住民が必要とする情報にマスメディアが対応できないという事態が発生しました。

 

災害時、最も必要とされる情報は、普段私たちが生活している地域の避難情報や安否情報です。

しかし、災害の規模が大きくなるほど既存のマスメディアではローカル情報に対応することが難しくなります。

 

この反省に立ち、私どもは、非常時に地域の情報発信できる仕組みを普段から整えておくべく、日ごろの準備が必要と痛感いたしました。

 

2014年3月より連載を開始した「平岸の歴史を訪ねて」は、自分の得意とする歴史分野から地域情報の発信に取り組むことで、地域とのつながりの構築や情報発信のノウハウを蓄積し、非常時に情報発信できる体制を作り上げることを最大の目的として始めました。

 

連載から2年余りが経過し、いよいよ当初からの目的であった地域情報を発信できる体制が、曲がりなりにも整ったように思います。

そこで、2016年4月、平岸地域に特化した地域新聞「道新りんご新聞」を創刊し、防災情報や生活情報・歴史などの地域情報を発信することにいたしました。

 

災害時に備えて、最も大事なことは複数の情報発信手段を確保しておくことです。

2015年より、FMアップルにて「平岸の歴史を訪ねて」のラジオ放送を始めたのも、紙面以外の媒体で情報発信の手段を確保しておきたいという思いからでした。

 

この度、道新りんご新聞の創刊に合わせ、ホームページを開設し、さらなる情報発信体制の強化に取り組みました。

「道新りんご新聞」は、紙面・ラジオ・インターネットを通じて、平時には平岸住民の豊かな文化的生活を支え、非常時には地域の安全を守るお手伝いをしたいと思います。

 

地域情報の発信こそ新聞販売所の使命であるという考えが、この平岸を起点として日本中に広がることを目指して邁進いたしますので、平岸地域の皆様に置かれましては暖かく見守りくださいますようよろしくお願いいたします。

 

 

北海道新聞永田販売所 代表取締役 伴野卓磨