道新りんご新聞の1年を総括する

今年も1年間、道新りんご新聞ならびに道新永田販売所をご愛顧いただきまして、誠にありがとうございました。

 

とはいっても、新聞販売所は元旦号を配り終わるまでは、仕事納めというわけにもいかず、今年を振り返る気分もあまり湧いていないのですが、一応振り返ります。

 

今年は、なんといっても道新りんご新聞を創刊したことにつきます。東日本大震災をきっかけに、地域の情報ネットワークを作り上げるという構想を抱いてから実に5年が経過しました。

2年半前に地域の歴史を“わかりやすく・詳しく・面白く”とのコンセプトでフォーカスした『平岸の歴史を訪ねて』を連載開始。今年の春、平岸の生活・歴史・防災情報を発信するハイパーローカル新聞『道新りんご新聞』創刊の運びとなりました。

 

後に振り返って、個人的にも、また大げさに言えば新聞販売業界にとっても大きな変換点となる年になるのではないかと思っています。

 

これまでの新聞販売業界は、一部の全国紙系列がそうであるように、極端なところではチンピラが洗剤や商品券などをばらまき、半ば強引に新聞契約を迫るというやり方が中心でした。

 

新規読者の開拓が仕事の中心であり、長年支え続けてくれている購読者に対して、新聞販売所は何もしていないじゃないか・・・それが6年前に他業界から入ってきた私の率直な感想でした。

 

かつての携帯キャリアがそうであるように、新規の乗り換え読者には何万円ものキャッシュバックを払っておきながら、固定客にはなんら還元されない・・・このような状態は、短期的な売上には結びついても、長期的には顧客の信頼を失うだけではないかと思います。「何が儲かるか」だけで判断するのではなく、「何が正しいか」で判断したいと思いました。

 

私の前職である六花亭の基本方針は、「美味しいお菓子を作ろう。楽しいお買い物の店を作ろう。みんなの豊かな生活を作ろう。そして成長しよう」です。そこには、売り上げや利益といった金銭的な価値観はありません。

 

しかし、美味しいお菓子を作る・楽しいお店をつくるという過程は厳しく求められ、自らにも求める風土がありました。そして、その結果が成長に結びついていき、全国有数の製菓会社になる土台となっています。

 

お菓子屋さんの本質は美味しいお菓子を作ることです。では、新聞販売所の本質は?もちろん、新聞を決められた時間内に正確にお届けすることでしょう。

 

しかしながら、インターネットの普及により、情報を届けるということの価値が低下していきました。新聞販売所の価値が新聞の宅配にしかないとしたら、いずれ電子メディアにとってかわられるのは明白です。

 

そこで、①GoogleやYahooでもまねできないものを作る、②お客様に役立つものを作る、③自らの得意分野を活かしたものを作る、以上の考えからできたのが「道新りんご新聞」でした。

 

私の仕事のポリシーは、「やった方がいいことはやらなくてもいいこと」です。矛盾しているように感じられるかもしれませんが、時間とお金が有限である以上、やった方がいい程度のことはやらなくてもいいと判断し、「やりたくてたまらないこと。やらなければいけないこと」のみをやるように心がけています。地域新聞の創刊は、「やりたくてたまらないこと」かつ「やらなければいけないこと」でした。

 

しかしながら、新聞販売所もビジネスであり、地域貢献といったボランティア的な側面だけでなく、利益に結びつかなければ意味がありません。どんなに志が高くとも、趣味でやっている限りは広まることもなく、社会に影響を与えることもありません。

 

私は、自分の販売所を大きくしたり、お金持ちになりたいからこういうことを言っているのではなく、新聞業界・新聞販売業界を立て直さないと結果的に、私たちみんなの不利益になると思っているからこそ、道新りんご新聞を新聞販売所の成功例にしたいと思っています。

 

では、ビジネス面での成果はどうだったかというと、残念ながら販売所自体は昨年より部数が落ち込む結果となってしまいました。しかし、その内訳を細かく見ると、転出入・入退院といった自然減では大きくマイナスですが、他の新聞に切り替える人や新聞自体を辞めた人(無購読)は減少し、トータルでプラスになっています。

 

スマホの普及による無購読者の増加は新聞業界共通の悩みであり、ここがプラスの販売所はほとんどないと思いますが、ここ10年ではじめてプラスにすることができました。とはいえ、全体ではマイナスになっていますので、まだまだ課題があります。

 

道新りんご新聞も“新聞”を名乗る以上最低でも週に1回は発行したいと考えていますし、内容にしても毎回質の高い情報を発信できているわけではなく、質・量・PR方法全てに課題が山積しているというのが正直な現状だと思います。

 

むしろ課題がたくさん見つかったというのが一番の収穫であると思っています。山登りに例えるならば、家を出て登山口の麓にたどり着いたというところで、一合目にも到達していないというのが偽らざる思いです。

 

※北海道新聞の1週間無料お試し読みキャンペーン実施中!こちらのページからお申し込みできます。