障がい者が地域で暮らしていける社会を作るには?草の実会と南ヶ丘町内会を例に

先日、相模原市で起きた障害者施設殺傷事件。犯行の動機として、犯人の障害者に対する歪んだ感情が挙げられています。

 

この事件を犯人の異常性に期することは容易いですが、私達の中にも障害者に対する差別や偏見が全く無いと言い切れるでしょうか?

 

そもそも、偏見以前によく知らないし、関心がないという人も多いと思います。

 

私も、ある人物に出会うまでは、そうでした。

昨年の「南ヶ丘・草の実夏祭り」の様子
昨年の「南ヶ丘・草の実夏祭り」の様子

社会福祉法人「草の実会」理事長の宇井文雄さんと出会ったのは、2年前の1月に『平岸の歴史を訪ねて』の講演会を行ったときでした。

 

初めての講演会であり、今から思えば稚拙な点も多々あったと思いますが、宇井さんは講演後わざわざ挨拶に来ていただき、大変励みになったことを覚えています。

 

障がい者施設が平岸にあることは知っていましたが、以前の自分にとってはどこか他人事であり、無縁の世界のことだと思っていました。

 

しかし、まちづくり会『いきいき南平岸』などで宇井さんとの交流が続く中で、障害者支援施設を地域に根付かせる熱心な取り組みを知るにつけ、自分にも何かできないだろうかとの思いが日に日に高まってきました。

 

何ができるかわからないまま悩んだすえに出した答えが、まず知ることだろうということで、昨年宇井さんに伺い、草の実会ができた経緯について教えていただきました。

 

宇井さんは学生時代から福祉に関心があり、卒業後障害者福祉の道に進みました。しかし、当時は障がい者を施設に隔離し、地域と切り離して生活するのが一般的でした。

 

宇井さんは、そのような福祉のあり方に疑問をいだき、盤渓に障がい者が地域とともに働きながら生活できる「草の実共働サービス」を開設します。

 

その後、大変な苦労があったものの徐々に規模を拡大し、法人化。2000年に現在地への移転が決まりました。

 

しかし、一部住民が障がい者とのトラブルを懸念し、反対運動を展開。札幌市を交えた話し合いは平行線をたどり、市議会への陳情まで持ち込まれました。

 

ーそれから16年。

 

草の実会が地域との共生を目的としてはじめた夏祭りは、『障害者も地域の一員として暮らしていける社会を作る』という理念に賛同した町内会や企業・団体により、支援の輪が徐々に拡大してきました。

 

前夜祭の花火大会では、町内会長がユーモアを交えながら司会を行います。そこには、当初懸念された障害者とのトラブルはなく、地域住民と障害者がともに笑い、ともに喜ぶ姿が見られます。

 

草の実会と南ヶ丘町内会の例は、当初のトラブルを乗り越え、障がい者と地域がともに安心して暮らせる社会を作り上げた好例といえるのではないでしょうか。

 

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※北海道新聞永田販売所では、地域貢献の一環として、社会福祉法人草の実会と協力し、草の実会「便利屋くれよん」にポスティング業務を一部委託しております。

 

残念ながら、障がい者が養護学校を卒業してすぐに就職できるケースは依然として少なく、ともすれば自宅にひきこもりがちな障がい者を支援するために、これまで草の実会では様々な業務を請け負い、支援活動を行ってきました。

 

障がいのある人もない人も、あたりまえの生活ができる地域づくりを目指し、今後も支援活動を継続・発展させていきたいと思います。