新聞に学ぶ思わず読みたくなるタイトルの付け方

スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫さんは、映画プロデューサーの仕事は突き詰めれば、映画のタイトルをつけることに尽きると語っています。有名なところでは、宮﨑駿監督が考えていた『もののけ姫』のタイトルは『アシタカセッ記』でした(【セッ】の字は草かんむりの下に耳が2つ入っている宮崎監督がこの作品のために作った漢字)。

 

鈴木さんは、その話を聞いた瞬間「売れねーな」と思ったそうです。アシタカセッ記も趣がありますが、タイトルを聞いて映画の中身を想像するのが難しく、このタイトルでは子供からお年寄りまで幅広く受け入れてもらえなかったでしょう。

iPhoneやiMacといった独創的な製品を生み出したアップルは、製品に負けないぐらい魅力的なキャッチフレーズを作り出すことで知られています。

 

「1000曲をポケットに」は、iPodが発表された時のキャッチフレーズです。『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン』の著者カーマイン・ガロは、思わず読みたくなるタイトルの条件として、①簡潔で、②具体的で、③利用者にとってのメリットが分かることを挙げ、タイトルの付け方を学ぶ教材として新聞は最高の手本であると述べています。

最近の北海道新聞を例に上げてみましょう。「アジアの需要漏らさず吸収 紙おむつ生産最多」、「なめ猫発案者が脱税 裁判長ルールなめるな」、「大谷進化の三刀流 ハム連敗ストップ」、「風の谷タキカワ ナウシカ愛機調整順調」・・・いかがでしょうか?記事を読んでみたくなりませんか?

このブログを例にしましょう。これまで書いた記事の中で最も読まれているのは、「札幌人が知っておくべき3つの地震リスク~2010年に清田区で発生した直下型地震を振り返る」という記事ですが、この記事、タイトルを2回変更しています。一番最初につけたのが「2010年に清田区で発生した直下型地震にみる札幌の地震リスク」。これでは読んでもらえないですね。

 

もっとわかりやすくと、「2010年に清田区で発生した直下型地震を振り返る~札幌人が知っておくべき地震リスク」。だいぶわかりやすくなりましたが、スマホなどの場合、冒頭部分だけが省略表示され、「2010年に清田区で発生した・・・」となるため、大事な部分を頭に移動し、「札幌人が知っておくべき3つの地震リスク~2010年に清田区で発生した直下型地震を振り返る」としました。

 

アメリカのジャーナリストの学校では、まず見出しの付け方から学ぶそうです。新聞や雑誌、ブログの記事が読まれるかどうかは見出しにかかっているからです。

 

ただし、人目を引くためにやたらと過激なタイトルをつけるのはいただけません。タイトルに惹かれて、クリックしてみたら中身がスカスカなら、短期的にアクセス数を稼ぐことはできても、長期的に見れば信頼感を失うことになり、本末転倒です(まとめブログなどでよく使われる手法ですが)。

 

記事の中身を示唆しつつ、簡潔で、かつ一捻り加えられたタイトルならば、思わず読みたくなるでしょう。今の時代は、メディア関係者ではなくても、SNSなどでだれもが気軽に情報発信者になれる時代です。情報過多の時代に、ありふれた見出しではなかなか人の目を引きつけるのは難しいものです。新聞社が長い時間をかけて培ってきた情報発信のノウハウは、今のSNSにも通じると思います。自分が記者ならどういうタイトルをつけるかを意識して新聞を読めば、大いに得るものがあるはずです。

 

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